あぁ初めての体験

10月17日 その日は午前4時30分に起床した。
動作が鈍い。 
車のシートにその身をおいた時には午前5時10分を回っていた。

その日は黒法師岳を目指していた。
車を駐車する場所まで 2時間と考えられていた。
それに基づき出発時間も逆算してあった。
その時間は4時30分だった。

出発時点で45分、そして駐車場所までは 2時間30分かかった。
歩き始めた時点で既に 1時間15分も遅れている。

今日の山行は僕の足じゃ最低10時間はかかる。
そのうち 3時間以上は林道歩き。
僕の計画は 2時間ほど余裕を見て組んである。
が、開始時点でその余裕分は既に飛んでしまった。

空は曇り。
林道には立派な滝が結構ある。



登山口には10時前に到着し、10時ジャストに登山口に取り付いた。




山頂までの往復に 8時間かかっても午後6時には登山口に戻れる。
ヘッドライトと懐中電灯を使えば危ない箇所はない。

登り始めると急登である。
急登は20分ほどで僕を尾根線に運んでくれた。
地図によるとこの後は頂上まで尾根線歩きだ。
僕の好きな尾根歩きだ。





と、思ったら左の脹脛に痙攣が来た。
『えっ痙攣?』『んな馬鹿なっ!』
痙攣はストレッチで程なく直った。
が、今度は右の脛がパンパンに張ってきた。
『なんだよっもう』
何だか急にやる気が萎えてきた。
そう思うと眠気が襲ってきた。

道の先は下りだ。 当然その後は登りがあるだろう。
眠いし・・・・・「止めた。下りる。」
ちょっと未練があったがこんなに調子悪いんじゃ駄目だ。
約25分登山道を歩いていた。
林道の登山口に11時に戻った。
少し林道を先のほうに歩こうかと思ったが眠くて・・・
体育座りで居眠りモード。
すると、林道の奥からオフロードバイクが 2台。
地元のおじさん二人組み。
「いやぁ有名でもない山に何で登りに来るんだぁ?」
「僕は何だか調子が悪くて途中で戻って来たんすよ。
「これが登山口かい。」
「単車で林道はよく走るんだけど歩いたこと無いからさ。」
「歩いてみようかと思って・・・」
「道は少なくとも僕の歩いたところは踏み後はしっかりしてます。」
登っていった。

林道脇で寝ているわけにも行かないし、林道を戻り始めた。
歩いているうちに日が差してきた。
『この辺の山は僕が登ると曇りだし下りると日が差してくるのか』

1時間くらい歩いて道の真ん中でポールにもたれて休んでいるのをさっきのおじさんが登山をやめバイクで後ろから追ってきてそれを見ていた。
「大丈夫? 乗ってくかい。」
「いや大丈夫です。ありがとうございます。」

そのときふと思った。
『あれ?そういえば車の鍵、どうしたっけ?』
『登山口でポケットから出してザックにかけて・・・・・』
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・な・く・し・た』
『戻ったって見つかる可能性なんてほぼ0でしょう。』
『でも戻って探すしかない。』
『落ちているとすればザックを最初に背負った場所だろう。』
『どこかにザックを置いておける場所ねぇかなぁ』
もう心はしょげ返り、思考回路はショートして頭は真っ白。
見つからなければ帰れない。
部屋の鍵も一緒だから、帰っても入れない。
道の脇にザックを置いて登山口まで戻るつもりでザックを下ろし鍵を引っ掛けたところを見ると・・・・・・・・・・・・・・
有った。 鍵はそのままの場所に引っ掛かっていたのだ。
もう涙が出そうなくらい嬉しかった。 よかったぁ。
本当に良かった。 神は存在する。 特に山には・・・・・

車に戻り途中のダムの辺りでちょっとのんびりして帰るつもりだった。

このダム。コンクリートじゃないの。


が、それより早く帰ろうと思い帰り道を急ぐ。
眠気が取れない。 運転中に意識が・・・・・
結局路側帯に車を停めて寝た。

痙攣もその他の筋肉の張りも多分睡眠不足に起因するものだろう。
睡眠中に無呼吸になってるような・・・・・・・・

今日は引き返して正解だったんだろうな。

体調を直さないと・・・・・途中で引き返すなんていうことは二度としたくない。